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誰もが気軽に立ち寄れるまちの東屋①

みるみる変身住宅レポ

誰もが気軽に立ち寄れるまちの東屋①

まちのアイコンとして親しまれていた三角形の元英語塾は、いったいどんな場所に生まれ変わるのか?

建築家の新森雄大さんが個人的に購入された、垂水区・塩屋町の古い一戸建て。このまちのために何ができるか。地域住民のためにどんな場所にすべきか。そして、その答えがなぜ東屋だったのか。建築を通して住民とまちの関係を問い直した、新森さんのプロジェクトに迫ります。

JR塩屋駅を山側に降りると、どこか懐かしい商店街が迎えてくれます。この商店街の路地には今回、新森さんが空き家を購入するきっかけになった不動産屋さんがあります。店頭のウインドウに、びっしりと貼り出された物件情報。その中で新森さんの目は、三角形の土地に建つ、ある一軒家に釘付けになります。場所は閑静な住宅街の一角、駅から北へ歩いて10分ほどのところ。それは、小さいながらも存在感のある物件でした。

新森現在、大阪を拠点に建築設計の仕事をしていますが、出身は徳島で今も実家がそこにあります。徳島に帰る際はいつもクルマ、明石海峡大橋がかかる垂水区は、その中間地点として、ずっと気になっているエリアでした。中でも塩屋のまちは雰囲気や空気が大好きで、訪れるたびにいい物件がないものかと気にはしていました。大阪のほかに、もう1箇所拠点をつくるならこのあたりがいいかなとも思っていましたので。そんなときに、この貼り紙広告ですよ。引き寄せられるというか、今回の巡り合わせは何かの縁。強い運命のようなものを感じました。

歪な土地の形状と敷地いっぱいに建つ築60数年の古い一軒家。買い手がつきそうもない物件。それも魅力のひとつだったと言います。新森さんの一目惚れです。以前は英語の塾だったという物語性にも惹かれたのだそう。大まかな住所と写真を頼りにウェブサイトで場所を検索、どの物件かをつきとめた新森さん。現場に行き、さらに建築家魂に火がつきます。最初は、ご自身の事務所にしようという考えもあったようです。でも実際にまちを歩く中で、あることが気になり、別の使い道を思いついたのだとか。理想の物件に出会えたこと、そして建築家として社会に果たすべき役割を見つけた喜び、その両方に笑顔がこぼれます。

新森建築家として社会に貢献したいという思いはありました。具体的に何をしようということは考えていませんでしたが、このまちや物件の周辺を歩いていて、ふとあることに気がつきました。まちなかに休憩できる場所がほとんどないと。道路沿いにベンチが設置してある場所はありますが、そこには屋根がない。東屋のような屋根のある休憩場所は、公園にしか設置されてない。まち角に屋根付きの休憩できるスペースがあれば、散歩の途中にちょっと休める。ご近所さんたちが喜んでくれるんじゃないかと。誰もが自由に使える場所にしよう、家の1階をフルオープンにしてまちに開こう。そう決めたのです。1階は柱だけのオープン空間でその上に屋根のように2階が乗っている、何だか東屋みたいに見えますよね。(笑)

1階はオープンスペースにして、道行く人が自由に休憩できる空間にする。2階はギャラリーなど、地域の人に使ってもらえる空間に。プランはどんどん膨らみます。もともと地域の方が塾を営まれていた家。地域の人にとっても馴染みのある場所です。近所に幼稚園や小学校もあります。こどもたちにもどんどん使って欲しいと新森さんは言います。さて、この独創的なアイデアをどんな風に実現していくのか。建物ができあがるまでの約2ヶ月半、新森さんと塩屋の物件から目が話せません。(つづく)

Profile

新森雄大さん
新森雄大さん
Niimori Jamison 共同主宰

一級建築士 1986年徳島県生まれ。滋賀県立大学大学院人間文化学研究科、スイス・イタリア大学大学院メンドリジオ建築アカデミー修了後、2018年Jamisonと共にNiimori Jamisonを設立。名古屋造形大学非常勤講師(2019-)、京都芸術大学非常勤講師(2022-)、京都市立芸術大学非常勤講師(2023-)

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