Good Morning 空き家

トップページ»リノベの教科書»
プロに聞く、断熱リノベのススメ Vol.6

リノベの教科書

プロに聞く、断熱リノベのススメ/Vol.6 一般社団法人 神戸市垂水区医師会 会長 久保清景先生

冬のヒートショックや夏の熱中症対策に。断熱リノベーションした住まいが、命に関わるリスクから身を守ります。

コロナ以降、健康に気を使う方が増えています。しかしながら気候変動の影響で、夏には異常な高温が続くようになり、熱中症で倒れる方が急増しています。一方、冬場にもリスクがあり、ヒートショックによって救急搬送される人はあとを断ちません。実はどちらも、その多くが家の中で起きています。冷暖房などの空調を見直すことも重要ですが、根本的な解決にはなりません。大事なのは、健康と住環境の関係を見直すことです。中でも、住まいと温度との関係に注目し「寒い家・暑い家は健康寿命を縮める」をテーマに、住まいの断熱性能の重要性を訴えているのが、循環器専門医の久保清景先生です。神戸市垂水区医師会会長で、国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進事業に係る調査事業「スマートウェルネス住宅等推進調査委員会」の委員も務める久保先生。健康と住宅の密接な関係や、注意すべきポイントについて、医師の視点から解説いただきました。

一般社団法人 神戸市垂水区医師会 会長
久保清景 先生

家の暑さや寒さが、私たちの健康に大きな影響を与えています。

医療の世界では、健康を住環境に関連づけて論じることはあまりありません。どちらかというと建築の世界で語られるケースが多かったと思います。住まいの断熱も、一般的には脱炭素の観点から推奨される傾向にあります。もちろん大事なことですが、やはり医師の立場としては、健康との関係に注目しています。私たち人間は、つねに住環境に影響を受けて生活しています。その中で、ぜひ知っておいて頂きたい話が2つあります。一つは「夏、急に暑くなった時、人間の身体はどうなるのか」ということ。もう一つは逆に「冬、急に寒くなったときはどうなるのか」ということ。とくに温度の急激な変化が人体に及ぼす影響は、健康を考える上で重要なポイントです。

夏の猛暑がもたらす「熱中症」、そのリスクは年々高くなっています。

夏の暑さ、とくに近年のような猛暑が、私たちの身体にどんな影響を与えるのか。みなさんがよくご存知の「熱中症」です。10年、20年前「熱中症」は、今ほど一般的ではなかったように思います。しかしながら、ここ数年の夏の暑さは異常。連日最高気温が35度を超え、時には40度近くまで上がったりすることも珍しくありません。「熱中症」によって救急搬送される方の数も、年々増加しています。人間は、暑い時には汗をかくことで、体温を調節しようとします。発汗により代謝が良くなり、血管が拡がり、血圧が下がります。これは、体温を下げるための、自然な身体の反応です。ところが、近年のような極端な暑さになると、この体温調節がうまく機能しなくなり、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、めまいや立ちくらみ、筋肉のけいれんなどを引き起こします。これが「熱中症」です。重症化すると意識障害や高体温、最悪の場合は死に至ることもあります。通常であれば、こまめな水分補給と、身体を冷やすことで、正常な状態に戻りますが、気温が高くなりすぎると汗をかくことすらできなくなり、体内に熱がこもり危険な状態になってしまいます。「熱中症」は真夏に多い印象がありますが、クーラーを使うにはまだ早い5月あたりから増えます。とくに高齢者や持病をお持ちの方は、体温調節機能が低下しているため「熱中症」のリスクが非常に高くなっています。

冬場に気をつけたい「ヒートショック」、原因は急激な温度変化によるものです。

冬の寒さ、とくに急激な温度変化によって引き起こされる「ヒートショック」も、住まいの温度環境と関係が深い健康リスクです。「ヒートショック」は、急激な血圧低下で、意識を失ってしまうことで起こります。人間の身体は、寒い場所にいると、血管を収縮させて、熱を逃がさないように反応します。これは、寒さから身を守るための自然な防御反応です。人間は寒さに対しては順応力があり、ずっと寒い場所にいると慣れによって血圧は正常に戻りします。ところが温度変化が急激な場合、とくに、暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動し、さらにいきなり熱い湯船に入ったりする際などに、急激な血圧の変動が起こります。寒い脱衣所で裸になると急に血圧が上がりますが、その状態でお風呂入ると今度は、急に血圧が低下。その結果、意識を失ってしまうのです。冬場に、自宅のお風呂場で倒れる方が多いのは、まさにこの「ヒートショック」が原因です。高齢な方ほど、熱いお風呂を好まれるので要注意です。お湯の温度を熱くしすぎない、いきなり湯船に入らないなど、冬の入浴には細心の注意が必要です。

断熱性能の高い家にリノベーションすること。それは健康寿命を伸ばすことに。

「熱中症」や「ヒートショック」から身を守るためには、夏涼しくて冬あたたかい家に住むことが重要です。断熱性のが低く、すき間の多い家では、住居内でもかなり温度差がありますので、健康を考えるなら、断熱性の高い家にリノベーションすることが大事です。北欧や韓国、日本でも北海道や東北など冬の寒さが厳しい地域では、断熱性能が高いことはもちろん、家中あるいは建物ごと暖房していることがほとんどですので「ヒートショック」はあまり起こりません。逆に西日本では、家は夏に涼しく過ごせいるようにつくられているケースが多く、冬の寒さには備えている家が少ないせいで「ヒートショック」の発生が多くなっています。兵庫県は、なんとその発生リスクが日本で2番目に高くなっています。つまり家の中の温度ムラをなくす必要性が高いということでもあります。高齢者の「不慮の溺死や溺水」による月別死亡データを見ると、やはり冬に多いことが分かります。このデータは、65歳以上の高齢者の数字ですが、中高年を含めるともっと多くなると思います。今や交通事故で亡くなる方よりも、自宅で「ヒートショック」で亡くなる方の方がずっと多い時代です。もはや住まいは安全な場所ではなくなっているということがわかります。

重要なのは「室温の見える化」。温度のバリアフリーが健康な住まいづくりの第一歩。

エアコンの設定温度が実際の室温ということではありません。例えば暖房時、暖かい空気は上昇します。すき間風が入ってくるような古い家で暖房すればするほど、暖かい空気は天井にたまり、足元は寒くなります。サーキュレーターで室温のムラを和らげることはできますが、それでも場所によって温度のバラつきがあります。意識していただきたいのは、ご自身がおられる床付近の温度です。そのために部屋のいろんな場所に温度計を置くことをお勧めしています。ひとつ温度計を買うだけでも、室温への意識が変わります。

久保先生が会長をつとめる垂水区医師会館。太陽光発電と蓄電池でエネルギーを自給。

二重サッシ、断熱材など、室温を一定に保つ施工で、健康的な居住空間を実現。

病気になってからかかる医療費に比べれば、断熱リノベする費用は安いものです。

住まいを断熱化しておくことで、熱中症やヒートショックのリスクを回避する。費用はかかりますが、人の命には変えられません。命が助かったとしても後遺症が残ると、多額の医療費がかるだけでなく、一度失った健康はもとに戻らないこともあります。医療費もそうですが、介護の費用やご家族のサポートは一生涯続くので、かなりの負担になります。そう考えると、住まいを断熱リノベして、健康を維持できた方がいいはず。これは先行投資であり、保険です。多くの人は、病気になって初めて医療機関に行き、治療したりお薬をもらったりしますが、病気になる前にリスクが分かっていたら、予防するためにお金をかけやすくなりますよね。健康のために「食事」や「運動」を見直す方は多いですが、「住まいの断熱」についても意識してほしいと思いますし、医療関係者は、断熱と健康の話をもっとすべきです。今回は、熱中症やヒートショックの話を差し上げましたが、不眠症や脂質代謝異常も、住まいを快適な室温に保つことで改善されます。住まいは、健康を維持し増進するための大切な基盤。健康的な住まいづくりを、一人ひとりが意識していくことが大切です。そのためには、断熱性能を向上させ、温度をしっかり管理する視点を持つことです。これからも医療に携わる者として、一人でも多くの人が健康で快適な生活を送れるよう、住まいの断熱と健康寿命の関係について情報発信を続けていきたいと思います。

断熱リフォームで、冬は暖かく夏は涼しい家に! 電気代の節約効果も
» 神戸市公式note

この記事をシェアする

神戸ライフをサポートするwebサイト
スマートこうべ
ページの先頭へ