プロに聞く、断熱リノベのススメ/Vol.4 LIXIL様・住まいStudio大阪
断熱性能の違いで、快適さがどう変わる?真冬の寒さを再現したショールームで比較体験。
住まいの新築や改築で、今もっとも重視すべきだと言われているのが、断熱性能を高めること。家のどこにいても、年じゅう心地よく暮らせる環境が理想ですが、実際に改修計画を立てるとなると、どうしても後回しになりがちです。そんな「室温」の重要性について、身体で感じて学べる施設があります。LIXIL「住まいStudio大阪」。豊かで快適な住まいと暮らしのために、LIXILが開設した高断熱住宅提案の拠点です。確かな品質、豊富な商品数もさることながら、本当に快適な住まいとは何か、暮らしやすさとは何かを、住む人の視点に立って考えた提案の数々。その結果、行き着いたのが「室温」の重要性を体感してもらえる施設だったのだそう。断熱性能が異なる部屋を巡りながら 「室温」の違いや温度ムラの差を体感し、比較できる。住まいの改修を考えている方には必見の「住まいStudio大阪」。この人気のショールームで、断熱の重要性について、またその重要性を社会に広めていこうとしている活動について、この施設の館長である門脇一彦さんにお話を伺いました。
LIXIL住まいStudio大阪
門脇一彦 館長
断熱リフォームの快適さを、改修前と改修後の室温のちがいで体感。
LIXIL住まいStudio大阪は、2020年の3月にオープンした、住まいの断熱のメリットを比較・体感いただけるショールームです。冬の寒さや夏の日差しを体感できるコーナー、窓の比較ができるコーナーなど、いくつかのエリアを巡る見学ツアーには、これまでに13,000名以上のお客様をお迎えしています。ツアーの初めにはまず、住まいの断熱と健康リスクの関係について詳しくご紹介いたします。なぜ断熱が必要なのかを、さまざまなデータを使ってご説明しています。その先が体験コーナー。当施設でいちばん人気の冬体感のエリアです。気温0℃の巨大冷蔵庫内に建てられた「昔の家(省エネルギー基準:昭和55年基準)」、「今の家(省エネルギー基準:平成28年基準)」、「これからの家(HEAT 20 G2)※」、「リフォームの家(HEAT20 G2)※」の中で、空間や床、窓際の寒さ、廊下やトイレの冷えをリアルに体験。断熱性能が高くなると、どれくらい室温が変わるのか、どれほど寒さや冷えがなくなるのか、温度をビジュアル化するサーモカメラの映像をご覧いただきながら比較体験していただけるようになっています。また、体感した断熱のしくみがわかるようにパネルや模型でも展示しています。さらに夏体感のエリアでは、真夏の日差しを再現。南からの強い日差しや強烈な西日に、日差し対策がいかに効果的か実感いただけます。冬の寒さと夏の暑さへの対応。日本ではじめて、新築とリフォームの両方の断熱性能を比較体感できる施設になっています。
高い断熱性能を住宅のスタンダードに。それが建物の資産価値向上につながります。
日本の建築は、長らくスクラップアンドビルドで歩んできました。無駄なことの繰り返しです。それを止めるためには、断熱性能を高め、建物を長く使い続けられるようにして資産価値をあげる必要があります。しかしながら、中古住宅で断熱リノベをされる方はまだまだ少なく、どうしても床や壁の修繕、設備のメンテナンスやグレードアップなどを優先される傾向にあります。でも、住んでから後悔してほしくはありません。せっかく改修したのに、壁際が寒いまま、結露もひどい、体感上は前と全然変わらない…。これでは困ります。生活して初めて分かる寒さなどのマイナスポイントを、このような場所があることで、事前に体感いただける。この意味は、すごく大きいと思います。断熱した部屋だけの体験なら「冬もあったかいね」で終わりますが、断熱していない部屋も含めて、比較していただけることで「えっ、これだけ変わるの?」「こんなにも違うの?」とその差をハッキリと分っていただけるはずです。リノベはお客様の夢を叶えるものですが、間取りや内装よりも、まずは断熱が大事です。「室温」を計画しましょうという提案も、このショールームのおかげで随分ご理解いただけるようになったと思います。
新築ではなく、既存の中古住宅の断熱性能をあげる取り組み。
2023年10月に、国が断熱基準を見直しました。新設住宅についてはそういった指針があります。私たちも約30年前から、住まいを高断熱化することの意味を提案してきました。たとえば、室温を18度に保つことが、住む人の健康には重要なこと。お客様にメリットがあると、当然満足度も上がります。私たちが、住宅の断熱に力を入れてきたのも、お客様のためという部分を大切にしてきたからです。しかし一方で、既存住宅はそのままでいいのかという問題がありました。既存の中古住宅も、しっかり省エネ住宅にしていただきたい。それが、このショールームの大きな目的です。国も省エネキャンペーンを実施するなど、既存住宅での取り組みにも力を入れ始めていますし、建築資材の値上がりの影響もあり、新築に代わり、中古住宅が注目されるお客様も増えてきました。私たちにとっても、中古住宅をどう活かすかは重要な視点。単なるリノベではなく、これからの日本が目指す断熱水準である等級6・7やHEAT20というレベルの性能に照準を合わせたい。新築なみの快適さとそれを実現する断熱性能。ここまで基準を上げることが求められています。
お客様にメリットが伝わるよう、断熱リノベの施工をパッケージにした商品も開発。
ひと口に断熱と言っても、いろいろな方法があります。断熱材の種類も使い方も、断熱する場所もさまざま。どこをどの程度断熱すべきかについても、一軒一軒異なります。それをメニューとして分かりやすくしてパッケージ化したのが「まるごと断熱リフォーム」という商品です。改修の指針として「お住まい断熱診断」(有料)という計測を実施しています。対象は、お客様の家のすべてのお部屋。ショールームと同じ要領、同じ機材を使って、さまざまなデータを取ります。サーモカメラを使ってお部屋の温度分布を測定したり、吸引機を使った気密テストも実施。それらのデータを元にして、建物の各部から逃げる熱量や気密性を計算します。改修後のシミュレーションと合わせて、目に見える形で改修プランとして提案できるようになりました。UA値なども、事前に計算してお客様に見ていただけるため、改修のメリットも一目瞭然です。目で見ても分からない、体感でしか伝わらない断熱リフォームだからこそ、数値化が必要。業界に先駆け、こういうパッケージ商品をつくったことからも、LIXILが中古住宅の断熱化に力を入れていることがお分かりいただけると思います。
自治体といっしょになって、空き家問題に取り組む。総合住設建材メーカーとしての責任として。
空き家がどんどん増えている状況を、いかに改善していくか。それは自治体だけに課せられたミッションではありません。企業にもできることはあります。LIXILの場合、その役割を担っているのが「住まいStudio大阪」です。より多くの人に高断熱住宅のことを知っていただきたい。知識としてだけでなく、体験によって断熱の必要性を感じてもらいたい。「室温」について考えるきっかけをつくること。それが、高断熱住宅普及につながると信じています。この施設の対象は、家を建てる施主様だけではありません。断熱リフォームを実施する側の知識やノウハウもまだまだ不十分。住宅業界が一体となり、断熱化の機運を高めていく。LIXILでは、「住まいStudio大阪」の活動を通じて、高断熱住宅の普及に努めていきます。
今回取材させていただいた「LIXIL 住まいStudio 大阪」とLIXILについて
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