Good Morning 空き家

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西村周治さん

建築家のしごと

隣の空き家、向かいの空き家と再生を続けることが、エリアの価値創造にもつながっている。

建築家・西村周治さん

シェアキッチン兼住居に生まれ変わった空き家

シェアキッチン兼住居に生まれ変わった空き家

空き家が多くある地域には、立地的な理由で建て替えや改修が難しい場所が少なくありません。兵庫区の山際にある梅元町もそういった空き家が集積しているエリアです。道が狭く車両が入れないために、工事が難しく、結果として空き家が増えている状況で、地域からは防災・防犯上、不安の声もあがっていました。そんな中で、一帯の空き家を再生・活用することでエリア全体を再生しよういう取り組みがはじまっています。プロジェクトをはじめた建築家でありオーナーの西村さんに話を聞きました。

改修前

改修前

新築ではなく、今あるものを活かすことへの強いこだわり。その原点が学生時代の苦い経験。

学生時代から先輩や仲間たちと、空き家を改修して快適に住めるようにする活動をしていました。改修が難しそうな空き家がたくさんあるエリアに入り、一軒一軒、少しずつですが住みやすくなるように手を入れていく。ところが突然、そのエリアは再開発されることになりました。更地になったかと思うと、あっという間に高層マンションが建ちました。これまでの活動は何だったのだろうか。行き場のない悲しい気持ちになったことを今でもよく覚えています。こんなにも多くの空き家がある日本で、なぜ新しい建物を建てる必要があるのか。そんな思いを持ちながら、空き家を購入してはリノベを繰り返してきました。住むためだったり、リノベした家を売って生計を立てるためだったり。兵庫区梅元町での活動も、その延長線上にあるものです。

バイソンの入り口の看板も廃材で

バイソンの入り口の看板も廃材で

住居+αの価値を持たせる改修。それがエリア全体の再生につながった。

たまたま見つけたこのエリアは、道が狭く、車が入れないために、修理できない空き家がたくさんありました。高齢の方たちが所有している空き家が、使われないまま放置されている。その反面、思うように収入が増えず、家を買えない若者たちが増えている。路地沿の空き家を1軒、2軒と購入して改修するうちに、通り全体を再生して、若い人が自由に活用できるエリアにできかないかと考えるようになりました。活動の場がない若者たちに応えよう。エリアを「梅村(バイソン)」と名付け、まちを丸ごと改修する取り組みがスタートしました。現在9軒の家を購入、8軒は改修済みです。住むだけではなく、活動や営みがある場所。いろんな人が集まり、自然と住み開きが行われる機能。1軒1軒の建物に、住居だけでなく何か魅力的なしくみを付加することで、若者が興味を持ってくれ、集まってくれる。それによって、徐々にエリアに賑わいが生まれています。

シェアハウスから見える神戸のまち

シェアハウスから見える神戸のまち

一軒一軒にちがう機能を持たせることで、ここに集う人の創造性を引き出したい。

たとえば、ア−ティストインレジデンス。これまで海外からのアーティストを中心に30名ほどが滞在し、作品の制作なども行なってくれました。短期間でも滞在することで、アーティストと地域の交流が生まれるきっかけになっています。また創ったものを展示するギャラリースペースを設けると、地域外からも多くの人が観に来てくれます。そのことで、またこのエリアや僕らの活動を知ってもらえる。この場所を何か自分たちの活動に利用できないか。そう思ってくれる人たちが増える循環が生まれています。シェアキッチンのある住居では、食に関するイベントや地場野菜の販売などを行っています。飲食店や農家が協力してくれることで、食を通じた交流が生まれています。どんな人が使ってもいい、どんな活動に発展してもいい。建築家としては、そんなイマジネーションの膨らむ場所を、どれだけ提供できるかということでしょうか。無料で開放しているのもそのため。若い人たちに活動の機会を持ってもらいたい。ずっとそういう想いがありました。

アーティストインレジデンスのリビング

アーティストインレジデンスのリビング

ポイントは、できるだけ廃材を利用すること。誰でも気軽に参加できる空気をつくること。

既にあるものをしっかり活用しようという気持ちがあります。とくに気にしているのは、廃材をできるだけ多く使用するということ。新しい建材などはできるだけ使わず、80%以上は廃材でまかなおう!そんなところをゴールにして、いつも改修の計画を立てています。とくにマンションのモデルルームの解体で出た廃材を積極的に利用しています。あと、リノベーションに興味がある人が、誰でも気軽に参加してもらえるしくみをつくるのも大事なことかなと思います。これだけ世の中に空き家があるのに、なぜ新築を建てる必要があるのでしょう?空き家の可能性にもっと目を向けて欲しい。そういう気持ちで今日も空き家の改修を続けています。

Profile

西村周治 さん
西村組

ボロボロの廃屋を買っては住みながら改修し引っ越す、というヤドカリのような生活を送る。不動産会社の代表も務め、自身で不動産取引から設計、施工までこなす。

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